BLOW BY BLOW THE STORY


彼は、一本のテープに聴き入っていた。カーマインからもらったテープの中身は、
ビリーコブハムのものだった。ベック、ボガード&アピスで活動中の彼は、その
後の音楽の方向を変え始めていた....。                   

ベック、ボガード&アピスは、セカンドアルバムをほとんど完成させていたにも
かかわらず、エンジニアのアンディ・ジョンズの不注意な言葉により、彼の集中
力は失われ、とうとうセカンドアルバムは、日の目を見ることはなかった。テイ
ム・ボガードもエピックレコードと問題を起こしてしまい、カーマインは、もう
テイムとは、2度と仕事すまいと怒った。                 

1974年5月、ロック界最強のトリオと言われたベック、ボガード&アピスは、
自然消滅した。                              

僚友であるピアニスト、マックス・ミドルトンが、ジャック・ブルースバンドを
脱退し、彼と行動を共にすることとなった、ここに"BLOW BY BLOW"が、スター
トすることとなる。まず、二人は、彼の家の近くの小さなスタジオで、ラフ・トラ
ックを作り始めた。彼は、まずリズムセクションを集める必要性を感じた。それも、
強烈なパワーのドラマーよりも、パーカッショニスト色の強いドラマーを望んだ。
マックスは、当時18歳だった、リチャード・ベイリー(元ゴンザレス)を推薦し、
元ザ・バッツ・バンドのフィル・チェンをベーシストとして迎えた。       

1974年12月ロンドンのAIRスタジオで、プロデュースにビートルズや、マ
ハビシュヌ・オーケストラなどの仕事で有名なジョージ・マーチンを迎えて
"BLOW BY BLOW"のレコーディングはスタートした。          

最初にレコーディングしたのは、"SCATTERBRAIN"だった。       
この曲は、最初彼自身のフィンガートレーニングのためのものが、だんだん、曲
として形を成してきたもので、この日までに2年という時間が過ぎていた。また、
実は、これ以前にカーマイン・アピスとこの曲のセッションを行っているが、マ
ネージャ同士がもめてしまい、このセッションも日の目を見なかった。また、カ
ーマインは、この曲の拍子は、自分のアイデアだと主張している。      

このアルバムのキーマンは、ピアニストのマックス・ミドルトンとプロデュース
のジョージ・マーチンだった。マックスは、忍耐強く、セッションをアレンジし、
作品を提供した。"She's A Woman"のレゲエ・アレンジもマックスのアイデアだ
った。最初は、レゲエ・アレンジには、彼とジョージには、抵抗があったが、最
終的には、素晴らしいものに仕上がった。                 

"Diamond Dust"は、バーニー・ホーランド(元ハミングバード)による曲で、
マックスとドラマーのリチャードで組み立てられたものだった。彼は、それを聴
いて約一月かけてソロをインプロバイズさせて完成させた。そして、ストリング
スを入れるというアイデアとアレンジは、ジョージによるものだった。     

"Thelonius"と"Cause We've Ended As Lovers"は、スティービー・ワンダーが、
彼のために書いた曲だった。スティービーは、以前"Supersitition"を彼に提供す
るという約束をしたにもかかわらず、モータウンの圧力により、シングルをリリー
スしてしまい、彼の怒りを買っている。"Cause We've ...."についても、スティー
ビーの元の妻である、シリータのアルバムで先にリリースされていた。このバージ
ョンの"Cause We've ...."には、雨の音と歌詞が入っている。          

このアルバムは、彼が積極的に作曲に参加したアルバムでもある。        
"You Know What I Mean","Constipated Duck","Air Blower"などに彼の名前が、
クレジットされている。また、"SCATTERBRAIN"を除くほとんどのテイクが、ファ
ーストテイクで収録されている。                       

そして、75年4月、"BLOW BY BLOW"は、リリースされた。

当時のイギリスの批評は、好意的なものではなく、むしろアメリカでの評価の方が、
高く、彼にとっての初のゴールドアルバム、初のトップ10入りのアルバムとなった。
レッド・ツエッペリンのジミー・ペイジは、このアルバムを「ギタリストのための
ギターアルバムだな」と表現した。そして、数多くのギタリストに影響を与えるアル
バムとなっていった。                            

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☆"BLOW BY BLOW" 曲紹介と感想   

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