最近のネットの話題


中一息子のDSが、壊れたので今度はDSiを買いました。
そうしたら彼がDSをネットに繋げたいというので、繋いであげたら、
何気にネットサーフィンやってて驚きました。画面が小さく不便ですが
立派にウエッブを見ることができていました。余っているSDカードも
貸してあげたらそれで音楽も聴けるんですね。任天堂恐るべしです。

という風にすっかり時代に取り残された感のある僕ですが、最近読んだ
クリス・アンダーソン(ワイアードの編集長!)が書いてベストセラーに
なっている「FREE」について書いてみます。

内容紹介 *********************************************************
「世界的ベストセラー『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデル」
「〈フリーミアム〉という新しいビジネスモデルを提唱し、ビット世界の
無料経済に正面から取り組んだニューヨーク・タイムズ・ベストセラー」

なぜ、一番人気のあるコンテンツを有料にしてはいけないのか?
なぜ、ビット経済では95パーセントをタダにしてもビジネスが可能なのか?

あなたがどの業界にいようとも、〈無料〉との競争が待っている。
それは可能性の問題ではなく、時間の問題だ。
そのときあなたは、創造的にも破壊的にもなり得る
このフリーという過激な価格を味方につけることができるだろうか?

●無料のルール
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう

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などと刺激的な文章で読ませてくれます。

中身としては、昔のラジオは、どのようにして無料放送になったのか?
から始まり、現在のネットのビジネスモデルについて詳しく書いています。
昔、95年頃マーケッティングを担当していて、ネットの普及期にビジネスモ
デルというか?パラダイムシフトという言葉が、よく叫ばれていました。
今振り返るとその世界が、現実のものになりつつあるように思えます。

子供の頃想像した夢のような21世紀の世界は、実際には非常にリアルなネット
が普及した世界だったということです。この本では、「注目」と「評判」を
新しい価値として主張していますが、このあたりをリアルマネーへ変換でき
ている企業が、グーグル以外にはあまり見当たらないというのが、厳しい現
実です。しかしながら、世の中は後戻りができないものですので、この方向
へ突き進むものと思います。

この本は、ビジネスにフォーカスされて書かれていますが、実際にはネット
は、人類の文化や政治に大きな影響を与えています。先月、グーグルが中国
から撤退するというニュースがありましたが、こちらも興味深いものがあり
ました。村上龍さんのメルマガのふるまいよしこさんの記事のブロガー霍炬
さんの文章が興味深かったので引用させて頂きます。

http://wanzee.seesaa.net/
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グーグル、百度と谷歌のこと
霍炬

 長いこと、このブログで技術以外のことを書いてこなかった。特に業界関連の話な
んて上滑りだし、人をけむに巻いた話になるのがオチで、関係のない人にとってなん
の価値もないから書こうとは思わなかった。でも、今回はここ5、6年のグーグルと
百度についてのぼくの観察について書くつもりだ。そこにはたくさん個人的な推察が
混じっていて、それが完全に正しいとは保証できないので、ま、ブレインストーミン
グのつもりで読んでいただきたい。

  1.グーグル:「Don’t be evil」と情報の流れ

   ご存じのようにグーグルの目標は「世界的な情報の整合」にある。見方を変えれば、
それは情報の流れを加速することだといえるだろう。情報の流れが速まれば、そこに
巨大な経済利益が生まれる。加速はつまるところ人間の経済活動のメインストリーム
であり、スピードは利益を生む。蒸気の時代から現在に至るまで、移動を加速させる
方法は人類に巨大な変化をもたらしてきた。ただ違うのは、蒸気と機械の時代に加速
されたのは人と物品の移動で、情報化時代に加速されるのは情報の流れという点だけ
だ。

   詳細に眺めてみれば分かるだろうが、すでに多くの場合において実体的な物質の流
れは必要なくなった。たとえば手紙を送る必要はなくなり、電子メールを書くだけで
よくなった。我われはまた新聞を宅配してもらう必要をそれほど感じなくなり、ポー
タルサイトで読めばいい。これが情報化時代によってもたらされた変化だ。そしてグ
ーグルがやっているのは引き続きそれらの情報の流れを加速することであり、人々が
求めるものをさらにすばやく目の前に届けようというわけだ。

   グーグルはずっと「ページランク」(グーグルが開発した検索システム)を大事に
してきた。不正を働いた者を処罰するほかはほぼランキングには干渉しないという態
度が情報の正しい流れを加速し、加速された情報こそがグーグルにとっての価値ある
ものであり、巨大な経済利益を生むからだ。グーグルは検索結果に広告をはさみこむ
ことを絶対に許さない。そうでなければ、検索結果の質低下→ユーザーの不満→検索
数の低下→広告クリックの減少を招き、最終的に収入の低下を招くことになるからだ
[後で述べるが、百度はこの点においてまったく違う方法を取っている]。

   アドワーズ(グーグルを使った検索結果の横に検索キーワードに基づいた広告が表
示され、利用者のクリックごとに広告主が収入を得ることができるサービス)を利用
したことがあるネットユーザーなら知っているだろうが、その単価はものすごく高い
わけではない。たとえ単価を非常に高く設定してもキーワードマッチの確率が低けれ
ば広告へのクリック数は低くなるし、クリック回数が低ければグーグルはそんな広告
の出現率を引き下げる。そうして、「AかBか」という検索の結果に「Bである」と
いう広告を投げ込んでユーザーに誤解をもたらすようなことを避けている。

   このようなシステムにおいて「使えるもの」はその効果を高めていくから情報の流
れは速くなり、グーグルはそれをますます加速させる。「使えないもの」はゴミと
なって情報の流れを阻害するので、グーグルはそのスピードをさらに落としてそれが
打ち捨てられるのを待つわけだ。

   「Don’t be evil」(邪悪なことをするな)というスローガンは東欧生まれの(グ
ーグル創設者の一人)セルゲイ・ブリン氏の人生の目標といえるだろうし、グーグル
の商業価値の準則と理解することもできる。邪悪なことをしなければしないほど情報
には秩序が生まれ、正しく流れ、グーグルに流れ込む実質利益も増大するのだから。
多くの人たちがこれをただのカッコつけのスローガンだと考えているが、実際にはこ
れはビジネスと個人的な目標という二つの準則なのである。

  2.百度:有償ランキングとグーグル

   百度は明らかに検索の巨大な利益を目にして、この市場に入ってきた。その検索の
質はともかく、まずは百度の利潤源を見てみよう。

   百度でも右側に広告[グーグル・アドワーズそっくりだ]、左側にランキングが示
される。左側のランキングはいわゆる有償ランキング(広告主がオークション方式で
検索順位を買い取る方法)と言われるもので、これは百度の「オリジナル」だ。有償
ランキングは百度の主な収入源になっている。

   前述したとおり、有償ランキングはユーザーの検索を妨害するものだ。これについ
ては(利用した人なら)覚えがあるはずだ。ある人気キーワードを百度で検索すると
数ページにわたって有償ランキングの結果が並ぶ。なぜグーグルはそんなことをせず、
百度はそうやって利益を倍にしているのか?

   昨日、ぼくは「ついったー」でこうつぶやいた、「アドセンス(上記グーグルのア
ドワーズの広告システム)は情報の秩序ある流れを促して利益を得る。有償ランキン
グは情報の流れを破壊して利益を得る。だからこそ、この二社は問題の見方が違うの
さ」ってね。

   多くの人たちがこんな経験したことがあるはずだ。キミのサイトがよく検索にかけ
られていると、百度のセールスが有償ランキングに参加するよう声をかけてくる。も
しそれに乗らなければ、キミのサイトが検索で出現する回数は激減する。これこそが
「情報の流れを阻害しても利益を生むことができる」ことをまさしく説明するものだ。
いうなれば、他人の子供の面倒を見ることでお金を稼ぐことができるけど、他人の子
供を脅して保護費をもらってお金を稼ぐこともできるってわけだ。

   となると、前述したように情報の流れを阻害するものはユーザーに打ち捨てられる
べきなのに、なぜ百度はその逆をいけるのか?

   検索エンジンがはじき出した結果を評価するのは実のところ非常に難しい。一般的
には「10%ほど優れている」となんて答はまったくあてにならない。それは市場で
たびたび証明されている。検索結果の10%程度の良しあしなんてユーザーにはそれ
ほど大した影響をもたらさない。(国産検索エンジンの)二番手にある「捜狗」や
「有道」だって、その検索結果を百度と比べたところで実際にそれほど大きな違いが
あるわけじゃない。でも、どうしてもトップにはなれない。同じようなことがグーグ
ルや「ビング」(マイクロソフトの検索エンジン)、「ヤフー」に起こっている。つ
まるところ、検索エンジンなんて早く市場入りした者勝ちってわけなのだ。

   百度が創設されたとき、グーグルは深刻なアクセスブロックに遭った。誰もが知っ
ているように、あの頃(中国国内の)大企業から普通の方法でグーグルにアクセスす
ることができなかった。その黒幕が百度だったかどうかをここで議論してもしようが
ない[百度がそのような行為をバックアップしたかしなかったかに関わらず、それは
起こるべくして起こったのだから]。あの数年間はちょうど、中国のインターネット
ユーザー数が最も急速に伸びた時代でもあった。そうしてインターネットの新ユーザ
ーたちが大量に直接、百度のユーザーとなった。

   検索エンジン市場では「一次ユーザーの獲得」が一番重要なのだ。

   百度とグーグルの製品と買収戦略を比較してみると、百度は一般にツールバーや情
報ナビゲーションサイト、ソフトウェアダウンロードサイトなど、巨大なユーザーア
クセス数をもたらす製品を買収してきた。グーグルのアクセスブロックもこのような
行為を逆利用した手法であり、百度がそれを演出したのかどうかは別として、少なく
ともその結果百度はさらに多くの一次ユーザーを獲得したのは間違いない。

   ライバルが基本的に存在しない市場においては、百度は「アクセス数で諸侯を手の
うちにおさめる」ことができる。そんな時、情報の正しい流れを一部破壊したところ
でそれほど深刻な結果をもたらさない。というのも、ユーザーには比較の対象がない
からだ。

   熱烈なグーグルの支持者たちは二つに分類される。まずは初期ユーザー。彼らはグ
ーグルを使ったことがあり、また百度も使ったことがある。はっきりとした比較と識
別能力によって彼らはグーグルを選択した。もうひとつはプロフェッショナルユーザ
ーである。彼らは百度では彼らが求めているものを見つけることができないことを
知った。そんな彼らには百度に対するグーグルの優位がぐっと高まり、ユーザーたち
の満足度が最高潮に達して彼らもグーグルを選択するようになった。

   中国のインターネットの世界は、エンターメントを目的としたユーザーが断然多い。
そんなユーザーたちにはグーグルと百度の区別がつかず、百度の方が良いと感じるこ
とすらある。というのも百度にはとても便利なMP3検索があるからだ。彼らはまず
百度に触れてそのままそこにとどまり、引き続き百度のユーザーとなる。それが現在、
我われが目にしている情景なのである。

3.「Google.cn谷歌」はなにをしたのか

 2006年、グーグルは中国オフィスを開設し、それを「谷歌」と命名した。これ
はグーグル始まって以来最も大胆で、また最も注意深くなされた試みだった。彼らは
それまで、コンテンツの検閲を求められるような国に進出したことがなかった[前述
したように、それは情報の流れを阻害し、同時にグーグルの価値観にも背くものだっ
たからだ]。

   細かな点にグーグルの慎重さを見てとれる。たとえば、Google.cnにはグーグルア
カウントがない。ユーザーは(Google.cnにおいて)個人情報を登録することができ
ず、パスワードもない。だからパスワード漏れという心配もない。後で「谷歌音楽」
(楽曲視聴サービス)が始まった時に、「どんなアカウントでも登録できるのにグー
グルアカウントだけ使えないじゃないか」とそれをあざ笑った人もいた。グーグルは
登録が必要なサービスを中国入りさせていないのだ。Gメールも、Gトーク(グーグル
のインスタントメッセンジャーサービス)も、ブロガー(グーグルのブログサイト)
もだ(つまり、中国でこれらのサービスを利用するには海外グーグルのサイトでアカ
ウント登録することになる)。

   グーグルは中国入りしたその日から、自分にボトムラインを引いた。そのボトムラ
インこそが、李開復氏(元グーグル副総裁として「谷歌」設置をけん引、そのトップ
を務めた。昨年辞職し、中国国内でIT人材育成会社を開設)が口にした「本社の圧
力」だったのだ。

   李開復氏の谷歌は「Google.cn」であって、決して「Google.com」ではなかった。
それは百度そっくりの外資企業でしかなかったのだ。

   谷歌のここ数年の仕事は「アクセス転がし」という言葉でくくることができる。そ
れはグーグルの伝統的な手法とは全く別のもので、グーグルはほとんど積極的にアク
セス数を求めることはせず、サービスの質がすべてを解決するという態度を採って来
た。しかし、谷歌はアクセス数を高めることを必須とし、あわただしく大学で講座を
開いたり、本を書いたりするプロジェクトマネージャーを務めるようになり、(グー
グル)創設者のようにじっくりと一つの市場を守ろうとする忍耐をもたなかった。そ
れがますます谷歌を百度そっくりにしてしまった。

   誰もが知っているように、相手と同じ手法を使ってライバルを打ち負かすことはで
きない。

   谷歌がこれまで最も力を入れたサービスが「谷歌音楽」だった。これは明らかに、
百度がMP3検索で先んじていることを見据えたもので、エンターテイメント中心の
インターネットユーザーを取り込むことが目的だった。もちろんグーグルには世界的
な名声があるから、そこで楽曲を紹介するためには版権を取る必要があった。そのサ
ービス自体の良しあしはここでは評価しないが、これは明らかにグーグル本社がやっ
てきたこととは違うものだった。グーグルに音楽製品のダウンロードを運営できない
とでも? グーグルにダウンロードサイトの運営能力はないのだろうか? いや、グ
ーグル本社がそれをやらなかったのはそれがその価値観にあわなかったからだ。

   同じように価値観に合わなかったのが、討論サイトの「天涯」などとの協力だろう。
先にも書いたが、特殊なデータ以外、グーグルがコンテンツ作りに手を出すことはな
い。グーグルは肝が据わっていて、そこでは百度のBBSサイトやその百科事典サイ
トも検索することができるし、その結果が目立つ場所に現れる。しかし、彼らは自分
たちがそれを真似てBBSサイトを作る必要はないと考えている。そんなことをすれ
ば競争のレベルが下がってしまうからだ。

   さらには、谷歌では中国から「Google.com」へアクセスした人を自動的に
「Google.cn」に引っ張り込んで、自分たちのシェアを高めようとした。それが多く
の昔からのグーグルユーザーを苛立たせた。ある著名なネットユーザーはかつて李開
復氏が参加した場で手を挙げて、「どうしたら中国できちんとGoogle.comにアクセス
できるのか」と詰問したことがある。

   「アクセス転がし」の後、谷歌の市場シェアは上昇した。当たり前だ。しかし、新
たに伸びたシェアのうち、どれくらいが正式な検索アクセスなのかは分からない。そ
れは百度の検索とBBSなどのサービスの割合と同じようにヒミツなのである。

   そうして、「グーグルの後ろを百度が追い、百度の後ろを谷歌が追いかける」とい
う図が出来上がった。谷歌は「アクセス転がし」のほか、さらに「収入奪取」もやっ
てのけた。

   (中国で)アドセンスを利用したことのある人なら、そのキーワードマッチのレベ
ルがだんだん下がり、医療関連の広告が増えて来たのに気づいた人もいるだろう。以
前なら不正なことをしてアカウントを抹消されたりする人がたびたびいたものだが、
その後誰からもアカウントが抹消されたという話を聞かなくなった。

   ぼくは07年にブログで、「悪いけど、あれは谷歌であってグーグルじゃないね」、
「ブログのグーグル・アドセンスをはずしたよ」という二本のエントリを書いた。

   あの事件はどちらもグーグル・アドセンスの特徴からしてありえないことだった。
グーグル・アドセンスのマッチ率は正確で、ユーザーを混乱させず、有効な情報を提
供するものだったはずだ。英語のサイトをのぞく人ならだれでも知っている通り、ア
ドセンスの広告のマッチ率はかなり精確で、時としてクリックする「必要」すら感じ
られるほどなのだから。

   その二つの特徴を放棄してしまった谷歌の広告は「広告連盟」でしかない。それは
小さなウェブサイトの広告バナーのアクセス量で広告主と交渉するのと本質的には同
じ。そのような広告戦略ならマッチ率なんて必要ないし、クリック詐欺を杜絶する必
要もない。そんな広告に一番お金を投じるのが医療業界や美容業界なのだ。

   それらの業界からはたっぷりとお金が取れる。谷歌にとっても百度にとっても、そ
してどこかのテレビ局にとってもそれは同じ話だ。

   この5年間、マスコミがいつも話題にしてきた「谷歌の困難」とは「本社からの圧
力」だったのだ。わずかにぼくが挙げた部分だけでもすでにグーグルの価値観に抵触
しているのだから、グーグル(本社)が不満に思わないわけがない。

   興味があれば、2005年から2010年の5年間、グーグルが何をしたのか、谷
歌が何をしたのかを比べてみるといい。そこには全く違うプロジェクトが並んでいる。
結果からすればそれはどれも「市場シェアの拡大、収入の増大」と言えるのだろうが、
グーグルはここ数年間、検索インフラを固めて来た。検索のコンテンツソースとその
規模を拡大し、検索を非デジタルなコンテンツにまで引用し、地図や衛星画像、アー
スやストリートビューなど一連の重要なサービスを発表し、モバイルや3Gに進出し
た。谷歌はなにをした? 音楽、人気ランク、そしてどっかからコピーしてきたイン
プット方法だけじゃないか。

   谷歌が生まれたその日、ぼくは一本の原稿を書いた。それは「中国を研究開発基地
と見なして投資、研究開発を行うだけで営業は行わないか、あるいはインドで支社を
開くべきだ」という内容だった。それが今、見事に的中したわけだ。

  4.孫雲豊氏の視点について

   商業価値と経済利益という面から考えても、グーグルの「邪悪なことはするな」と
いうのはただの「カッコつけスローガン」ではないことが分かる。情報の秩序化でも
うけようとする企業にとって、邪悪なことをしないことは「マスト」である。百度は
その逆なので、邪悪なことをしなければならないのだ。

   グーグルは幸せだ。商業価値を正確な価値観の上に築くことができるのだから。そ
れは非常に貴重なことだといえる。残念なことに、百度にはそれはできない。

   孫雲豊氏(百度のトッププロジェクトデザイナー。グーグルの中国撤退示唆後、
「胸クソ悪くなる」というタイトルでグーグルを批判する内容のブログエントリを発
表したが、その後それを削除した)の発言は支離滅裂だ。彼は一方で「グーグルは人
権戦士などではなく、利潤を求めるケチな野郎」と言いながら、社会的公正さという
旗を振り回して百度の道徳感を持ちあげた。この二つは明らかに矛盾している。もし
グーグルの目的が利潤だけだというのなら、百度も同様なんだから道徳なんて振り回
すべきじゃないだろう。

   さらに彼は自分の視点は全く間違っていないと言いながら、自分のブログエントリ
を削除した。削除は必ずしも彼の意志によるものじゃないとかばう人もいるが、なら
ば、「道徳感」を持った百度のスタッフとして彼は他人の意見に屈服して自分が正し
いと思うものを削除すべきではなかったはずだ。

   百度のスタッフたちは孫氏を弁護しているが、それだって支離滅裂だ。百度が非常
に良い企業だということを証明しようとしても、孫雲豊氏が行っていることが正しい
という証明にはならない。ナチスドイツが戦闘力の高い軍隊を持っていたところで、
ヒトラーが正義だということを証明したわけではないのと同じだ。さらに彼ら自身が
矛盾していて、孫雲豊氏がライバルに対して罵詈雑言を発するのは正しくて、他人が
孫雲豊氏を罵るのは間違いだと思っているのだから。もし、孫雲豊氏が個人としてあ
る企業を罵ったのであれば、その企業のユーザーには反撃する権利がある。孫雲豊氏
が百度を代表しているのならば、彼には職業道徳というものが可哀そうなほど欠けて
いる。いかなる点からしても、ぼくは百度スタッフたちの意見にうなずくことができ
ない。

   もちろん、ぼくは百度が無茶苦茶な会社だと思ったことはこれまで一度たりともな
いし、どちらかというと百度はだんだん責任感のある企業になって来たなと感じたこ
とがたびたびある。しかし、残念ながら、スタッフの上から下まで企業と同じように
変化を遂げたわけではないらしい。

   この事件がグーグルの中国におけるシェアに打撃を与えたと喜ぶのは間違っている。
現実には、中国のインターネット市場が消失したのである。それは市場シェアとは関
係なくて、マクロ環境に関わるものだ。この国で脈々と温められてきたインターネッ
トの時代はここで終わり、ITエリートたちは彼らが日ごろバカにしている伝統的な
ビジネスマンたちと同じように合併され、再編され、消失していき、多少残ったそれ
は利潤の薄い片隅へと追いやられるだろう。キミのアパートの階下で路上管理局の目
を気にしながら路上に野菜を並べて売る、気の毒な野菜農家のように、びくびくしな
がらほんのちょっとの収入を求めていくしかなくなるのだ。これはこの業界にいる一
人ひとりにとっての悲劇だ。

   「ついったー」ユーザーのTinyfoolは言った、「百度の矛盾は、彼らが世界的な資
本市場で注目を浴びることができるのはグーグルの成功があってこそなのに、彼らは
常にグーグルがつぶれてしまえばいいのに、と考えていることだ。そして世界的に不
可能なはずのそれが、今中国で起こってしまった。彼らは本当にそれを喜んでいるん
だろうか?」。

   グーグルがぼくらにくれた最大の価値は、情報の流れを加速させることのほかに情
報を永遠に残し続けることだ。ぼくがこのブログエントリを書いて「発表」というボ
タンをクリックすれば、数分後にはクモの子たちが押し寄せてこの文章をなんどもコ
ピーして世界各地へと押し出してくれる。そしてこのエントリは永遠に生き続ける。
どこかの組織が管理したり削除することはできないし、その流れを阻止することもで
きない。広告会社にもできないし、ある国の政府もできない。孫雲豊氏の言論、そし
て百度のその他スタッフの言論もこのエントリと一緒に永久に生き残って歴史の一部
となるだろう。これこそぼくらがグーグルを熱愛する理由なのだ。

   さてと、「発表」をクリックしようか。

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ちょっと長すぎる引用で恐縮ですが、驚かされたのは中国のグーグル(Google.cn)は、
Google.comと違うということでした。中国人スタッフが、企業のポリシーを無視した
ということも撤退について影響を与えていたのかもしれません。

やはり中国という国は、難しいのかもしれません。同様の事が日中合弁の企業でも
発生していると思います。ある意味中華思想の存在の影響だと感じます。オバマ政権
が、最近中国に対する姿勢を硬化させてきているのも、中国の中華思想による増長が
あるのかもしれません。(某環境世界会議での中国の態度やアフリカあたりでの影響力
の増大など欧州などでも良い印象は持っていないと思います。)

大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜
http://blog.goo.ne.jp/dongyingwenren

こちらで中国のネットでの書き込みを翻訳したものを読むことができます。
いろいろと制約が厳しい国でなんとかやっているところが、興味深いです。

日本にとって中国は隣国であり、アジアの一員として影響力が巨大な国です。
相手をよく知り、理解して対応しないと後々痛い目に会いそうです。

2010年2月1日

平川丈二は最近こんなことを考えている!
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